2023年5月19日更新

大阪にゆかりのある選手に聞いてみよう!大阪マラソンで世界新記録・和田伸也選手-陸上(パラリンピック)(2/2)

1 2

―日々の練習について―

記者.競技生活は楽しさが勝つ感じですか?しんどさとか、どんな感じでしょうか?

和田.そうですね。走り始めた当時は楽しいだけでしたが、今はパラリンピックの選手となりましたし、2018年9月からは仕事として走るようになりました。長瀬産業の社長からは、私の走りが「社員の一体感の醸成」につながることを期待していると常に言われていますので、東京パラリンピックでも、しっかり力を発揮したい、責任を背負って走りたいという思いはありました。私を信じて雇っていただけて、その結果、東京パラリンピックでメダルを取れて恩返しができたので良かったです。

広報部に所属していますが、普段は出勤せずに練習に専念しています。ケアに通う時間も確保できるので体の調子も良くなり、トレーニングに割ける時間も増えました。かなり悩んで仕事の環境を変えましたが、本当に思い切って環境を変えて良かったと思います。長瀬産業には監督も陸上チームもないので、自分で管理して日々練習しています。トレーニングメニュー、月間、週間のトレーニングやレースプラン、レースプレビューなども自分で決めていますが、周りのランナーからアドバイスをもらうなどして参考にしています。きつい練習も良い結果を出すためのものですし、しんどいと思ったことはないですね。

記者.特に楽しい点、これがあるからこそやっている、あるいは生きがいやモチベーションにつながっていることがあれば教えていただけませんか。

和田.マラソンや長距離は個人種目ですが、全盲のランナーには伴走者が必要です。普段の練習は大阪・京都の市民ランナーの方にお願いしていますので、毎日違う人と話せるのが楽しいです。試合では走りながら指示を出さないといけないので、私よりも走力が高い方にお願いし、スピード練習、ジョギングなど、メニューの内容にあわせていろいろな方に伴走していただいています。おかげで「人のつながり」が広がり、いろんなランナーから刺激を受けています。

ランナーの皆さんも得意不得意があり、短い距離が得意な人、長距離やゆっくり走るのが得意な方など様々です。いろんな仕事をされている方と交流し、参考意見を聞き、刺激を受けながら、自分の競技に落とし込んでいっています。人生観も広がり、皆さんとのつながりの中でやっていけている。皆さんに、私の走力を支えていただく、応援していただいて感謝しています。東京パラリンピックで大きな結果を出し、皆さんと喜びを分かち合えたことが嬉しかったですね。

記者.今回の質問では伝えきれなかったことがあればお話しいただけますでしょうか。

和田.同じ境遇でランニングを始められる方がいらっしゃれば、「ぜひご一緒にどうですか?」と伝えたいです。からだを動かすことは非常にいいことですし、ウォーキングからでもいいと思うので…。先ほどお話した京都の「鴨川パートナーズ」のほか、大阪の長居には「長居わーわーず」と言うチームもあります。今はコロナの関係で、練習ができたりできなかったりですが、みんなが集まって、いろんな方といろんな話をしながら楽しく走っています。是非一緒に集まって、競技でなくてもいいと思いますし、健康のためにと言うことだけでもいいと思います。ブラインドの方も、健常者の方も一緒に参加していただければと思います。それが視覚障害者の理解を深めると言ったことにもつながると思います。

鴨川パートナーズはブラインドのチームではあるのですが、知的障害の方も一緒に走っていますので、ご参加いただいても大丈夫ですし、是非来てもらいたいと思います。知的障害者の方も今、お二人が参加されています(注:インタビューは5月ごろに行いました)。いろんな障害をお持ちの方も、まずはご連絡をいただければと思います。精神障害の方はランニングすること、運動に制限のない方ならご参加いただけます。

記者.ご自身の障害がお仕事や活動などで肯定的に感じることがありますか?あるとしたらそのエピソードなども教えてくださいますか?

和田.目が見えないと不便なことも多いのですが、パラ陸上に仕事として専念させてもらい、責任も大きいですがその分非常にやりがいも感じています。趣味で始めた陸上マラソンが仕事につながって、わたしの人生で今が一番充実しているように思います。おかげで、今シーズンも自己ベストを伸ばしていけそうなトレーニングができています。非常にうまく回っていますね。

全失明して、ブランクはありましたけどもランニング、マラソンと出会わなければ、パラリンピックにもつながらなかったですし、パラリンピックを目指す選手にはなっていなかったでしょう。パラリンピックに出会って結果を出す選手になり、長瀬産業という大きな会社の企業選手として活躍できて、社会に貢献できていることにやりがいを感じています。

―今後の目標―

記者.今後の目標を教えてください。

和田.当面の目標は2024年のパリパラリンピックですね。東京パラリンピックでは銀メダル、銅メダルのみで金メダルを取っていませんので、金メダルを獲得するのが目標です。競技者としてはそれを実現するまでは辞められないなと思っています。歳を重ねてきていますけれども、まだまだ継続してやれると思っています。

また、私の走りによって社会の中でのブラインドの理解が進み、こういう選手がいるということを理解していただいて、視覚障害者への理解を深める活動に貢献できたらと思っています。また、視覚障害の方などは一時の私のように塞ぎ込んでしまう方が多いと思いますが、私が鴨川パートナーズと出会ったように、一歩踏み出せば進んでいける世界があると言うことを知っていただきたい。私自身、そういう場がなければ、こうして外へ出る機会がなかったと思います。そういった場があることも伝えていければと思っています。

皆で元気に、社会で共に生きていけるような活動をしていきたいです。走りを通じて、そういった社会への理解を促進するような活動に貢献していきたいなと思っています。

記者.是非お体に気をつけながら、頑張っていただければと思っています。

和田.ありがとうございます。

記者.本日はありがとうございました。

お知らせ

●長瀬産業株式会社の和田伸也選手ページ

https://www.nagase.co.jp/sustainability/athlete/wada/

●賀茂川パートナーズ

http://partners.skr.jp/

●長居わーわーず

https://waawaas.sakura.ne.jp/

1 2

ペルオンとは?

ペルオンはホープグループ、ミッション株式会社を母体にしたペルオン実行委員会が制作してるポータルサイトです。

障害の当事者が作る当事者目線のサイトが作れないかと思い、サイトを立ち上げました。ペルオンという名前はPersonnes handicapées(ペルソンヌ・オンディキャピー)の略で、障害者仲間という意味からとりました。

当事者会・支援団体・家族・地域・職業・年齢などの枠を超えて、障害者に関係する全ての人が連携して、さまざまなことにチャレンジし、障害者の可能性を探ってまいります!

ペルオンに興味を持ったあなた!もうすでに、仲間なんです。

トピックの分類
精神障害の仲間
発達障害の仲間
知的障害の仲間
身体障害の仲間
その他の仲間
当事者
家族
支援者
医療従事者
研究者

「障害」の表記について

当サイトでは、「障がい者」を「障害者」と表記しています。

「障がい者」という表記の場合、音声ブラウザやスクリーン・リーダー等で読み上げる際、「さわりがいもの」と読み上げられてしまう場合あります。そのため、「障害者」という表記で統一をしています。

メルマガでいち早く、更新をご案内します。ご希望の方はメールフォームにてお申し込み願います。

画像